クラスメイトが使い魔になりまして (ガガガ文庫)|読書感想文

 3か月ほどの執筆期間を想定して、第14回小学館ライトノベル大賞への投稿を目標に活動していく予定です。

 無謀かもしれないですが、やってみたいと強く思っておりまして、本業もあまり忙しくないこの時期(ちょっと忙しくなりそうな予感は会って不安はありますが)に活動を軌道に乗せることが大事と考え、この目標を設定しています。

 昔から、電撃文庫とガガガ文庫にはお世話になっていたというか、特に楽しませてもらったので、このレーベルで自分の本が出せたら、という憧れもあります。

 そこで、やっぱり最近の受賞作を知らないとレーベルとしてのニーズが分からないかなと思い、直近の第13回でガガガ賞と審査員特別賞をW受賞された「クラスメイトが使い魔になりまして (著:鶴城 東 氏)を読んでみました。

 素人目線で恐縮ですが、作家としてのノウハウを少し学び始めた自分の視点で感想を書かせていただこうと思います。基本的にネタバレにはならないように気をつけているので、読んでみようかと思っている人の参考になれば幸いです。

鶴城 東/なたーしゃ 小学館 2019年05月17日
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受賞作のレベルの高さを思い知った

 いきなり全体的な感想になってしまいますが、大賞ではないにしろ、副賞に当たる賞と、プロの審査員が評価した作品はどんなものかという観点で行くと、やっぱり素人とは次元が違うな、という純粋な感動がありました。

 正直な話、こういった学園ファンタジーラブコメ(?)的な作品はありふれていそうで、積極的に手に取ろうと思って読んだことが無かったのですが、受賞作とは、このレベルで話をまとめ、ストーリーやキャラクター、世界観を作り上げていく必要があるのかと、ちょっと現段階での自分の認識との差にこれは難しいな、と気後れしてしまいました。

 と、同時にもし自分がこれだけのレベルで作品を作ることができたら楽しいだろうな、というワクワクも同時に発生しています。そのために、このワクワクはどこから来たのか、魅力はどこにあるのかを考えてみたいと思います。

ターゲット層を明確にした魅力的なキャラクター設定

 この作品のメインターゲット層は、おそらく萌えやハーレム+バトルといったエンターテインメントが好きな中高生になると思います。だから万人にお勧めできる本ではないのは確かです。

 これを例えば、会社の女性陣たちに「めっちゃいい本ですよ!」なんて意気揚々と紹介してしまったら、たぶんかなり引かれます。自分、35歳ですから。

 だけど、すべての人に評価される作品などこの世には存在しないわけですから、想定するターゲットに対して、納得のいく物語であれば良いという意味では、その条件で完成度が高ければよいので、レーベルに合ったニーズに応えられていると判断します。

 その意味で、キャラクターの設定は王道と言ってしまっても良いかと思います。どこか厭世的でやる気を見せないことを良しとする、思春期に特有のイキりがある主人公でありながら、実は女性への耐性が無い(もちろん童貞、キスもまだ)という設定は、この物語にとって重要な意味を持ちます。

 そして、その周りを取り巻くキャラクターは女性ばかり、というのも徹底しています。泣かせるギャルゲーあたりに登場するような男の友達が全く出てこないので、余計なことは省き、純粋なハーレム状態を疑似体験できます。

 才色兼備でツンデレなメインヒロイン、親友の役割を果たすのは小動物系な可愛さを持つ女の子、責任感の強い典型的な生徒会長に、その妹は反対にヤンキー属性、幼馴染は不思議系理系女子に、物語のキーとなるグラマラスで最強の魔人。個々人には確かに真新しさは無いかもしれないが、その関係性の配置ストーリーによって意味のあるものになっていると思うので、読者はメインヒロインだけではなく、いわゆる「推し」キャラを作って応援するという楽しみができます。

 ちなみに自分は小動物系可愛さを持ちつつ、淫魔であるサキュバスを使役する旭ちゃん推しです。彼女の思いが今後どこかで報われてほしいとさえ思います。

 とにかく、多感な思春期男子をターゲットにするにはよりどりみどりのキャラクター配置でありながら、各キャラクターにきちんとサービスシーンを自然に盛り込む技術は素晴らしいと思います。

世界設定を説明するテンポが軽快

 自然に読み進めることができる作品というのは、やはりテンポをとても意識して作りこんでいることがわかります。

 会話が長々と続いたり、世界観の説明についてもしっかりとなされているのですが、そのタイミングが絶妙です。

 世界設定の説明は必ず何かしらの事件やピンチのエピソードの合間に語られますし、キャラクター同士の掛け合いも、会話だけに陥ることなく、地の文や心情が合間にリズムを作っています。

 そのため、速読をしてもきちんと流れがつながり、各キャラクターの心情や世界観をインプットさせるための軽快なテンポが終始守られているように感じました。

 おそらく、小説を書く上での基本の基なのかもしれませんが、それを終始上手く持ってくることができていること、これが少なくともプロ作家としての基本スキルであることを見せつけられました。

見せ場となるシーンで訪れる、転に次ぐ転

 起承転結、は物語の基本です。そしてエピソードごとに起承転結は繰り返されるものだと、今勉強中のテキストにも書かれていますが、それをさらに上回る、起承転々結が要所で必ず展開される、アイディアと技巧に素直に楽しませてもらいました。

 重要なバトルのシーンもありますが、その時点では最大の切り札を主人公の機転で使い切ったと思っても、それでは敵は簡単にやられません。

 絶体絶命のピンチに陥らせて、さらに読者の予測を超える(もしかしたら鋭い読者は先を読んでしまうのかもしれませんが)解決策を用意して、想定外の結末になるエピソードたちで構成されている点が、やはり読者に飽きさせない最大の表現力と綿密に寝られたアイディアだと感じました。

 今の自分のレベルで考えると、プロットとしては面白いように感じてしまいますが、ある意味計画的にストーリーが進んでしまいそうな気がしています。

 でも、読者に答えを先に当てられて、それがどんでん返しもなくその通りに進んでしまったら、間違いなく駄作と言えてしまうでしょう。大喜利で答えを先にお客さんに言われてしまう木久扇さんみたいなものです。

 それを各エピソードできちんと隠し玉を作ってストーリーを盛り上げることができるのは、やっぱり受賞作に求められる条件なのだな、と実感しました。

まとめ

 ほとんど固有名詞を使ったストーリー紹介とかせずに、(名前を出したのも気に入ったキャラの旭ちゃんだけ)という読書感想になってしまいましたが、ネタバレを含まず、創作のノウハウを学んでる身としての感想ということで、こういう形になりました。

 もしかしたら読書感想の基礎的な部分はすっ飛ばしているかもしれませんが……、今の自分の文章力はこんなものです。

 でも、楽しい時間を過ごさせてもらったことには大変感謝しています。自分もそう思ってもらえる文章を書けるように、練習と研究を重ねていきたいと思えたとても良い本でした。ありがとうございます。

鶴城 東/なたーしゃ 小学館 2019年05月17日
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