六人の赤ずきんは今夜食べられる(著:氷桃 甘雪)(ガガガ文庫)|読書感想文

 平日はなかなか思うように執筆活動が進みません。仕事がやや忙しくなったというのもありますが、眠気がかなり邪魔をします。病んでた時代から飲み続けている睡眠薬が悪さをしてる感じがするので、今夜は久しぶりに飲まずに過ごしてみるつもりです。

 ちょっとネガティブな前置きで恐縮ですが、本日ちょっとホラー&サスペンステイストのある作品を読みました。「六人の赤ずきんは今夜食べられる(著:氷桃 甘雪)」こちらは昨年度、第12回小学館ライトノベル大賞、優秀賞受賞作となります。 レーベル研究の一環としての読書は続いております。

 今回もテーマ的なネタバレはもしかしたら含むかもしれませんが、読む気が失せるようなネタバレはしないように心がけて感想を書いてみます。(ネタバレしたらオオカミに食べられると思います)

氷桃 甘雪/シソ 小学館 2018年05月18日
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ファンタジーがミステリへの入り口

 本書のジャンル、は何と言えばいいのでしょうか。いろんなジャンルの小説を読んできたとは言えない自分には何とも決めがたいところですが、印象としては、ファンタジーとミステリの融合の要素が強かったです。

 オビに書かれているような、パニックホラーとしての要素ももちろん楽しめますが、やっぱり誰が「裏切者(あるいは○○)」なのか、を推測しながら読み進めていくのが自分にとっては一番面白い楽しみ方でした。

 ただ、残念なことに、疑いの目を向けるべき対象が、みんな可愛い「赤ずきんちゃん」なので、最終章を前にしても「こいつが裏切者(あるいは○○)だ!」と決めることが出来ず、どうか宇宙人でありますように、などと無駄なあがきをしてしまいました。それだけに衝撃の結末でした……。

 普段ほとんどミステリには手を出さないので、赤ずきんをモチーフにしたファンタジー世界観と融合された物語は、自分にとってはとっつきやすい入り口になりました。

ホラーはピリ辛? でもそれも伏線だった

 パニックホラーのテイストは、ちょっと最近までゾンビゲーをやりすぎてたせいか、自分にとってはちょっと刺激が弱かったかもしれません。ただ、それでも一章からそれやっちゃう!? な衝撃的展開には度肝を抜かされました。

 何が起こるかは読んでいただかないといけませんが、とにかくこの先どうなってしまうのか、もうその時点で先を読まざるを得なくなります。

 そして、最後にその場面の描写にきちんとした伏線があったのだと思い返すと、やっぱりラストはちょっと衝撃でしたね。

 もう、曖昧な表現しかできないのが辛いですが、とにかくそういったギミックや伏線をきちんと用意して物語として収束させるのは純粋にすごいと思います。

最大の山場の後に迎えるクライマックス

 二章の最後に、最大の山場を迎えたと思いました。ええ、高をくくっていましたとも。

 分量的に、あとはミステリの謎解きが待っているのかなあ、と安心しきったところに訪れる、さらなるクライマックス。これが本当にパンチが効いていました。おぞましくまた迫力のあるシーンによる、起承転々結な物語構成。これを体感できただけでも読んだ甲斐があったものです。

 ミステリ、謎解き要素を物語に含めるとしたら、というか物語を作るにあたっては、読者に予想させない、さらに斜め上を行くような展開を提供しなきゃいけないなあとつくづく感じました。この辺りは本当に勉強になりました。

まとめ

 レーベル研究だと思って、これまでいくつか作品を読んできましたが、やっぱりどの作品も結局のめり込んでしまいますね。なるべく、どこがその作品の良いところなのか、何が受賞の要因になっているのか、という視点を持とうと心がけていますが、それ以前に、こうして没頭できる物語であること、が大前提なのかな。と思ったりします。

 続きものではないので、これで終わりかあという残念さはありますが、やはり今回も読んでみて良かったと思える作品でした。ありがとうございました。

氷桃 甘雪/シソ 小学館 2018年05月18日
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