さて、今日もキャラクター設定を考えつつ、ガガガ文庫のレーベル研究のため最近の小学館ライトノベル大賞受賞作を読んでいます。
今回は第11回にて審査員特別賞を受賞した、「世界の終わりに問う賛歌 (著:白樺みひゃえる)」を読んでの感想を書いてみます。
基本的にあらすじやネタバレは書かずに、自分なりにどういう点が受賞に至る良い要素なのかを中心に所感を述べるようにしています。
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人間の醜い欲望を掻き立てる描写に震える
序盤を含めて、結構残酷な描写があります(一応注意点として)。それが嫌悪感を示すものではなくて、この先どんなバイオレンスが待ち受けているのだろうという期待を抱かせてくれるのが不思議でした。
おそらく、そこは主人公の設定によるのかなと考えました。拷問官という後ろ暗い職業でありながら、読者が共感できるまっとうな神経を持ち合わせている点です。現実にはもしかしたらそんなことはあり得ないのかもしれないのですが、どんな形であれ、キャラクターに共感を得られなければ物語に没入することはできないので、当たり前のことかもしれませんが、そこは奇抜な設定にすることなく、徹底してキャラクターの設計を行われたところなのかなと思います。
今の自分では書けない社会性
正直自分は、昔から「社会」という教科が苦手でした。歴史は基本的に事件や戦争の記録なのに嫌気がさしたり、外に出たり旅行が億劫で地理にも疎く、政治経済は食わず嫌いかもしれませんが、とにかく「社会」に分類されるものは苦手なのです。今でもいい年して新聞やニュースもろくに見てません。
この辺は、小説家を目指す以上、改めなければならない弱点ではありますが、とにかくそういうバックグラウンドがあるため、国家間の争いや政治に関することをストーリーの中心に置くことは現状の知識では難しいと思っています。この作品はそうした自分には書けない、社会性につながる設定を、現実とは少しだけ違う世界観においてきちんと表現されているので、それがうらやましいなと思いつつ、見習わなければならない点だなと思いました。
クライマックスにハラハラし、最後は納得
正直なところ、中盤は前述の社会的な世界観の説明に当てられる感じで、あまり印象に残る事件が無いなと感じるところもありました。主人公とヒロインの掛け合いが面白かったりして、読むテンポやリズムが乱れることは無かったので、その辺は描写の技術だと思いますが。
ですが、クライマックスで最初に感じた期待にきちんと応えるだけでなく、ヒロインのキャラ設定と、主人公の職業がきちんとマッチしたうえで、物語を収束させるアイディアと発想は素晴らしいなと思いました。
後半にかけて、話の展開が大きくなり、どうやって収拾させるのだろうと気になっていきますが、クライマックスでハラハラさせつつ、納得のいく終わり方をさせる。そして話に一貫性がある。こうした技術というのはきちんと学ばなければいけないですね。
まとめ
残酷な描写もあるため、小学生にはお勧めできないかもですが、こういうテイストの物語もたまには良いかなと思いました。ヒロインが可愛いのが更に黒い欲望を掻き立ててくれます。
今回も勉強させていただきつつ、満足できる時間を過ごさせていただきました。ありがとうございます。
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